迷子のシンデレラ

「私は朝岡物産の娘さんはとても気立てのいい方だと思っている。
 気品にあふれ、葉山商事にも申し分ない」

 そうか……。

 内村課長に扮してまで朝岡物産に来ていたのは、葉山の婚約者候補の偵察も兼ねて。
 恵麻が周蔵のお眼鏡に叶ったのなら、周蔵は見る目があると智美は思った。

 恵麻ならば葉山のことも琉依のことも安心して任せられる。

「恵麻……さんはとてもいい方です。
 周平さんともお似合いだと思います」

「智美……何を言って……」

 彼の方を見られなくて俯いたまま告げる。

「周平さんも恵麻とは気が合うって仰っていたじゃないですか」

「智美!」

 悲痛な声が胸に刺さって苦しい。
 けれど、きっとこうするのが一番だ。


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