迷子のシンデレラ

「だからなんだよ。
 俺のこともずっと放っておいて、今さら親父面されても迷惑なんだよ!」

 周蔵は目を閉じて、葉山の言い分に反論をしない。
 智美は居た堪れなくて、つい口を挟んだ。

「もしかして、葉山さんの瞳の色ってお母様譲りなんじゃ……」

 目を開いた周蔵が力なく笑う。

「ハハッ。私も葉山なんだがね」

「あ、すみません。
 つい、いつも葉山さんと呼んでいるので……」

「そのような関係で愛してるだの言われても、若気の至りの戯言にしか思えないのだよ」

 咎めるような言葉を聞いても言わずにはいられなかった。

「だから亡くなった奥様を思わせる周平さんの瞳を見られないんですか?」

 ずっと気になっていた。
 真っ直ぐに見つめる葉山に対して、何かから逃れるように見つめ返さない周蔵。

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