迷子のシンデレラ

 智美は周蔵へ訴えた。

「琉依も、琉依も同じなんです。
 お願いします。
 抱っこしてもらえませんか?」

 智美は抱っこ紐から琉依を外して、周蔵へと差し出した。
 見開かれた目が琉依を真っ直ぐに見つめて、それから細められた。

 その眼差しは愛に満ちていた。

 琉依は急に起こされた上に苦手な男性の前に差し出されてぐずり始めた。
 そんな琉依を葉山は智美の両手から抱き上げてあやし始めた。

「ほら。大丈夫。
 琉依のおじいちゃんだよ」

 優しい琉依へ向けた言葉を聞いて周蔵は息を飲んで片手で口元を覆った。
 その手は微かに震えていた。


< 154 / 193 >

この作品をシェア

pagetop