迷子のシンデレラ

 葉山は誰に言うでもない感じで不平を口にした。
 自分の父に真っ直ぐに言うには照れ臭いようなそんな口ぶりで。

「だいたい捻くれてるんだよ。
 俺らを試すようなことを言って引っ込みがつかなくなっただけだろ?
 朝岡物産に来て、俺のこと勧めてたのはそもそも智美へだったみたいだし。
 親父だって智美と俺がそうなればいいって思ってたんだろ?」

「え……。言われてみれば……」

 内村課長だと思っていた周蔵に「うちの若手が」と葉山のことを勧められた。
 冗談とはいえ、そんなこと……。

 周蔵はバツが悪そうに顔を背けて言った。

「控えめが美徳でも行き過ぎだ。
 ……周平の母親も智美ちゃんのようだったよ」

 最後の一言に葉山と顔を見合わせて微笑んだ。
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