迷子のシンデレラ

「俺は……いや、なんでもない」

 言い渋る葉山に智美は気になっていたことを聞いた。

「どうして、お父様が関わると言葉遣いが乱暴になるんですか?
 今もご自分のことを『俺』と……」

「あぁ……」と呟いた葉山はどことなく居心地が悪そうな顔をした。

「言いたくないのならいいんです。
 すみません。変なことを聞いて」

 誰にだって聞かれたくないことはある。
 特に親子関係に口を挟まれたくない気持ちは理解できる。

 不躾な質問を向けてしまったと反省していると葉山は弁解した。

「いや。いいんだ。
 ただ、この歳になって理由が親父に反抗したいからでは、格好がつかないだろう?」

「そんな……理由?」

 つい、こぼれた本音に彼は拗ねたような声を上げた。

「だから話すのをためらったんだ。
 ついでに言うと君には真面目な好青年に見られたくて『僕』を通してた」

 これには智美が驚いた。

「では、『俺』の方の葉山さんの方が自然体なんですね」


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