迷子のシンデレラ
「いや、そんなことはないよ。
ただ……」
「ただ?」
首を傾げた智美に葉山は薄く笑った。
「まずは智美の葉山呼びと敬語をどうにかしないとね」
妖艶に弧を描く薄い唇を見て急に落ち着かない気持ちになり、『俺』がどうだとか『僕』がどうだとかということはどこかに吹き飛んでしまった。
「さぁ。帰ろうか」
到底彼には敵わない心持ちでいる智美へ葉山はリップ音を立ててキスをしてから前へ向き直るとハンドルを握った。