迷子のシンデレラ
6.迷子のシンデレラ
車はほどなくしてマンションの駐車場に着いた。
智美のアパートよりも素敵ではあるけれど想像よりもずっと庶民的だ。
心の中を読んだのか、それとも顔に出ていたのか、葉山が説明した。
「超高級マンションじゃなくてガッカリした?」
皮肉たっぷりに言われ慌てて首を横に振る。
「いえ。そんな。
逆に親近感というか……」
葉山は薄い笑いを吐いた。
「親父の力は借りたくなかったんだ。
働き始めてからは自分だけでどうにか生きてみたかった。
と、言っても葉山を名乗り葉山商事で働いている以上、恩恵は受けているんだろうけどね」
葉山が囚われた鳥のようで不憫に思った。
恵麻の近くにいたから分かる。
恩恵以上に苦労もあることを。
「そんな顔しないで。
智美と琉依のお陰でこれからは親父といい関係を築いていけると思う」
葉山の言葉に救われている。
探し出されてから……いや、出会ってからずっと。
今だって自分と琉依に大切な役割があるのだと奮起することが出来る。
智美と琉依は葉山とその父、不器用な二人の潤滑油になること。