迷子のシンデレラ
「葉山さんと話すと自分がすごく必要とされている気がして……」
「気がするんじゃなくて実際そうなんだよ」
必要とされている。
そのことに喜びを感じる。
自分は誰かから必要とされたかったのだと、しみじみ思う。
「まさか親父の前に来て身を引くと言うとは思っていなかったよ。
どこまでも油断ならないよ、智美は」
慈しむような眼差しから一転、チクリと嫌味を言われてしまった。
「私は……大切な人には幸せになって欲しいんです。
もしも周平さんの幸せに私が不必要なら喜んで身を引きます」
だからこそ何も告げずに彼の前から姿を消した。
その思いは今も変わっていない。
誰かから必要とされれば嬉しい。
けれど、大切な人が幸せになる為なら、そのことを一番に考えたい。
「僕と幸せになろうって思ってくれたとばかり……。
僕の幸せを考えるのなら君が必要だって言ったよね?」
確かに言われた。
だからって……。
葉山はため息を吐いて横向きになった体で脚を組んだ。
車の中では彼の長い手足は窮屈そうだ。
けれど体勢を整えて、時間をかけて説明しようとする姿勢が見て取れた。