迷子のシンデレラ
「智美に何かをして欲しいわけじゃない。
僕の側にいて穏やかに微笑んでいて欲しい。
いてくれるだけで癒されるんだ。
僕はきっとそういう女性を求めていたし、そういう女性が必要なんだ。僕には」
彼の意見に飲み込まれそうになって反論する。
「でも、葉山さんは事業を引き継いで発展させていかなければならないですよね。
その葉山さんをサポートするのには、私では力不足です」
彼の目を見ていられなくて目をそらす智美の両手を握る。
その手は大きくて温かい。
「君にサポートは望んでいないよ。
そもそも僕の結婚は政略結婚しか許されないとでも言いたげだね」
「そ、そういうつもりでは……」
慌てて訂正しようと顔を上げた智美の唇を葉山は優しく口づけた。
「葉山さん……」
「政略結婚じゃないのなら、どういう結婚か分かる?」
小さい子へ諭すように言われて、からかわれているような気分になる。
「恋愛結婚でしょうか」
「恋愛って何?」
「何って……」