迷子のシンデレラ
「あの、葉山さん?」
智美の声掛けにも応えずにエレベーターへ乗り込み、いつの間にかドアの前にいた。
琉依を渡されて抱っこすると鍵を回し、ドアを開けた葉山に背中を押され、躊躇する暇もなく部屋へと上がった。
後から入った葉山がドアを閉めるや否や智美を琉依ごと後ろから抱きしめた。
「葉山……さん」
「周平、でしょ?」
「……周平さん」
「うん。好きです周平さん。は?」
「えっと……その」
照れる智美に「フッ」と軽い笑いをこぼして、覗き込んだ葉山は唇を重ねた。
無理な体勢のキスはもどかしくて胸を焦らす。
「お願い。琉依くんを……」
「また琉依、優先?」
不貞腐れた声を出しながらも執拗に智美へ触れていく。
それはあの夜を簡単に蘇らせて智美の体を熱くさせた。
「や、待って……」
力ない訴えも聞き入れてもらえず、我慢ならなくて声を上げた。