迷子のシンデレラ
「私だって葉山さんに触れたいんです!」
こぼれた本音に息を飲んだ葉山は肩へしなだれかかった。
首にかかる髪の毛がくすぐったい。
「さっきまで逃げようとしていたくせに」
拗ねた声を聞いてもどうにもできない。
「逃げなきゃ囚われて困るくらい……。
あなたに、惹かれているんです」
「ここでそれは反則でしょう」と文句を言って「智美ちゃんこそ煽らないでよ」と呟いた。
逆戻りの智美ちゃん呼びが余計に心をざわめかせた。
嘲笑うように葉山は首すじに再び悪戯を始める。
「やっ、だから待って……」
甘い吐息混じりの声が漏れて、しゃがみこみそうな智美から葉山は琉依を受け取った。
「今だけはいい子だから大人しく寝ていようね」
無邪気にキャッキャ言っている琉依へ諭すように言って部屋の奥へと連れて行く。
なんだかんだと言いながら琉依の面倒を見てくれる葉山に胸が温かくなった。
こんな日くらい琉依を預けようと言われていたらきっと彼とはやっていけない。