迷子のシンデレラ
「……葉山さん」
言葉を濁した理由にまで気づかれているなんて……と心の中で感嘆を漏らす。
智美自身も葉山の側にいるのならば、親子三人で暮らすことに強い憧れを感じる。
そうだとしても全てから逃げた自分が今の生活をする為に協力してくれた人たちに不義理をするわけにはいかない。
「だから、そこは周平でしょ?」
鼻をかじられて肩を竦めた。
「智美は責任感が強いから簡単には仕事を辞めないって……前の時もそう思っていたんだけどなぁ。
ねぇ。智美ちゃん?」
含みを持たせて言う葉山は再び智美ちゃんと呼んだ。
そのせいで智美は朝岡物産にいた頃を思い出した。
彼に惹かれ、それでも逃げたあの時を……。
遠く昔のことを思い返していると頬に優しく唇が触れた。
「意地悪が過ぎたかな。そんな顔しないで。
結婚することは置いておいて。
今は再会できた愛しの人を胸に抱きたいよ」
頬に手を当てて彼を見上げると慈しむような眼差しの彼と目が合った。
彼が愛おしい。
その想いに嘘はない。
「周平さん」
「ん?」
「……愛しています」