迷子のシンデレラ
連れ立って琉依の元へ行くと両腕を上げ、抱っこして欲しいと訴えている。
その琉依へ微笑みを向けた葉山は抱き上げてベッドの端に腰掛けた。
見よう見まねでミルクをあげている葉山を不思議な気持ちで眺めた。
琉依を見つめる瞳が柔らかで優しい。
その彼へくっついて頬へキスをした。
「こら。今、悪戯するはずるいでしょう?」
「私も周平さんが消えてしまいそうに思えて、確認したくなるんです」
いつも、今だけの関係。
そう思ってきた。
だから、今日だけは彼の背負うものを忘れて彼へ触れたい。
「あとでイヤってほど確かめさせてあげるよ」
優しい父親の顔から妖艶な男の顔を覗かせる彼に体が疼いた。
初めて肌を重ねたあの日が再び蘇る。
けれど彼に抱かれる琉依へ視線を移すと気持ちが鈍る。
「琉依くんがいるのにいいのかな……」
穢れのない澄んだ瞳を視界に映すと高揚する気持ちをどこか後ろめたく感じてしまうのだ。