迷子のシンデレラ

「ごめんなさい。分からなくて」

 手の甲を撫でられて身じろぐと「智美は僕に火を点ける天才だよ」と耳元で囁いて耳を食んだ。
 彼の行動があの日の情事を一気に蘇らせて体が熱くなる。

「俺の女になって」

「え……」

 掠れた色気を含む声で言われて胸が疼く。
 その智美を弄ぶように囁かれた。

「好きになって欲しいと、求愛したんだ」

「あの時は素性も分からなくて……」

 それも、手のひらへのキスは会って間もない時にされた行為だ。

「そう。その時から既に」

 震える胸は彼に囚われて離れられない。
 彼を見つめ、そして唇を重ねた。

「私もあの時からあなたのことが……」

「あぁ。知ってる。
 じゃなきゃ体を許したりしない。
 君はそういう子だと信じていたよ」


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