迷子のシンデレラ
『はい。……どうした?』
低くて穏やかな声が耳をくすぐる。
『周平さん……』
『ん?』
優しい声を聞いて涙が溢れそうになる。
『……愛しています』
『あぁ僕も』
胸がいっぱいになって苦しくてため息を吐く。
『ダメですね。周平さんの幸せを一番に考えて逃げたくせに』
『……うん』
言い訳ばかりが心に浮かんで上手く言葉にならない。
掠れて情けない本音がこぼれた。
『会いたい……』
手が震えて携帯を握りしめる。
ついさっきまで一緒にいたのに。
彼の声を聞いて、余計に想いがあふれてくる。
『……僕も』
同意した彼はすぐに冷静な意見を口にした。
『けれど今後の為に仕事をしっかりしよう。
離れていても想っているよ』
『そう、ですね』
電話は切れ、不通音が虚しく響いた。