迷子のシンデレラ
2.戻ったはずの日常
あの一夜限りの出来事は日々の忙しさの中に紛れていった。
ただ、未だに深いエメラルドグリーンを生活のふとした時に見つけると胸の奥が鷲掴みされたように痛くなった。
すれ違った男性がつけていたストライプ柄のネクタイの濃い緑色。
電車で見かけた上品なおばあちゃまがつけていらした指に輝く宝石の色。
はたまたカフェで出された水が入ったグラスに映る街路樹の新緑。
さまざまなエメラルドグリーンが視界に入って目を覆いたくなる。
それでも日々をこなし、忙しなく仕事に明け暮れた。