迷子のシンデレラ

 その思いが態度に現れて声色がきつくなる。
 いつもならそんな態度を見せないように努めるのに、あの時の彼かもしれないと少しでも思った自分に智美は動揺していた。

 そして、顔を上げた先で目が合った。
 そこには光を浴びて黒目が透けた深いエメラルドグリーンの瞳。

 吸い込まれそうになって彼の言う内容が頭から滑り落ちる。
 深く体の奥に響く声……それにスッと通った鼻筋……と彼の外側とあの日の彼と似ているところばかりが気になってしまう。

「すみませんでした。
 葉山商事の葉山です。
 いつも弊社の内村にあなたの話を聞かされていたので、つい知り合いになった気でいました。
 えっと、榎下……さん?」

 差し出されている名刺へ慌てて手を添えて頂戴する。

「あ、はいっ。
 葉山商事の葉山様。
 えっと、内村課長ですね。
 本日、確かに営業の河本とお約束されています。
 内村課長の代理の方ということでよろしいですか?」

「はい。河本様にはお伝えしてあります」

「では、打ち合わせブースでお待ちいただけますか?」

「はい」
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