迷子のシンデレラ
「智美みたいな子なら少しくらい御曹司に見初められても罰は当たらないって思って。
それであの仮面舞踏会に誘ったの」
初めて知る恵麻の思いを聞いて智美はかぶりを振った。
「買い被り過ぎよ。
私は平凡でつまらないただの会社員だもの」
「ううん。そんなことないわ。
智美は私の大事な親友だもの。
でもね、それがまさか王子になるだなんて……。
王子はやめておいた方がいいと思うの」
「どうして?」
「えっと、それは……」
言いにくそうに言葉を濁らせる恵麻に智美は先を促した。
「女性関係が派手だとか、そういうこと?」
智美の言葉に恵麻は観念したように口を開いた。
「……そうなの。
あまりいい噂を聞かなくて。
近づく女性も王子とならって喜んでついて行くような人も多くて」
王子と呼ばれるくらいだ。
それが許されてしまう立場なのだろう。
けれど、あの日の彼が葉山だとまだ決まったわけではない。
智美は心のどこかで別人であって欲しいと思っていたのかもしれない。
その思いが言葉となってこぼれ落ちた。