迷子のシンデレラ

「それに葉山さんが今回の舞踏会に参加するって噂になっていた麗しの君だから」

「嘘……」

 彼が仮面舞踏会に参加していたことは裏が取れてしまった。
 もうこれで彼が葉山周平だと確定してしまったようなものだ。

 夢は夢のままで良かったのに……。

 脱力する思いでいる智美へ恵麻は気持ちを察したように励ました。

「平気よ。
 向こうは気づいてないようだったし。
 御曹司が直々に取引先へ顔を出すなんて滅多にないんだから」

 恵麻の励ましの言葉へ曖昧に微笑んで冷めてしまったコーヒーに口をつけた。
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