迷子のシンデレラ
仕事を終えると重い足取りで会社を出た。
いつも通りだったはずなのに、心は晴れない。
会社を出てすぐの植え込みのところに目立ち過ぎる人物を見つけて目を奪われた。
葉山周平だ。
誰かを待っているようで、植え込みのブロックへ体をもたれさせて立っていた。
道行く人はチラチラと彼を見ているのに声をかける人はいない。
華やかさと共に簡単に声をかけられない気品を彼も兼ね備えていた。
気づかれないように顔を伏せ、足早に通り過ぎようとする智美へあろうことか葉山は近づいて声を掛けた。
「榎下さん。お疲れ様」
「……ッ。お疲れ様です」
待ち人が来るまでの話し相手でも探していたのか、その相手として白羽の矢が立ったのなら、全力で刺さった矢を抜いてこの場を立ち去りたい。
「どなたかお待ちですよね?
河本でしたら、まだ社内におりました。
葉山様がお待ちだと伝えて参りましょう」
とにかくこの場から立ち去りたくて葉山の返事を聞く前に踵を返す。