迷子のシンデレラ
内村課長は見た目はダンディだけれど人のいいおじさんで『智美ちゃん、智美ちゃん』と親しげに呼んでくれる。
智美が入社する前から朝岡物産を担当していた人で、智美のことは新入社員のころから知っている。
内村課長が受け付けに来るとみんなが和やかになるような人。
そこまで考えてふと思い出した。
「もしかして内村課長の仰っていた期待の若手って……」
「え、そんなこと外で言ってるの。
参ったな」
照れ臭そうに頭をかく彼の姿が意外で自然と頬が緩んだ。
その智美を見て、葉山も頬を緩ませた。
「やっと表情が柔らかくなった。
内村の人柄のお陰だね」
「……内村課長はお優しい方なので」
入社したての頃。
初めて受け付け業務をした時に緊張のあまり内村課長の名前を間違えしまったことがあった。
「葉山商事の葉山課長ですね」
名前と会社名がごちゃ混ぜになって名前も『葉山』と呼んでしまったのだ。
教育係でついていてくれた先輩が慌てて「失礼しました。内村課長」と頭を下げてくれて、智美も言い間違いに気づいて「すみません!」と頭を下げた。