迷子のシンデレラ

 すると内村課長は「葉山商事の葉山だなんて、ものすごい褒め言葉だね」と笑い飛ばしてくれた。
 その時は理解できなかったが、後から葉山商事は世襲制だからと聞いて内村課長の懐の深さに感服した。

 何より『褒め言葉』だと言い切ってくれて智美は救われた。

 言い掛かりの一つでも言おうと思えば「葉山商事の葉山だなんて、嫌味かい。葉山じゃなきゃお断りとでも言いたいのか?」とでも言えばいいのだから。

 それからすっかり内村課長は智美のことを可愛がってくれるようになり、智美が何かに落ち込んでいそうな時は程よいタイミングで「また葉山課長って呼んでくれないの?」と言って笑わせてくれた。

 そんな内村課長の認める若手ならば、葉山はただの世間知らずのお坊ちゃんというわけではなさそうだ。

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