迷子のシンデレラ
「今日は内村に免じて食事に付き合ってくれないかな」
「えぇ。はい。そうですね」
内村課長のせいだろうか、それとも彼の誘い方が巧妙なのか。
普段なら断る食事の誘いに乗ることにした。
思っていたよりもずっと彼が話しやすい人だったからかもしれない。
彼が智美のことをシャーロットだと疑っている片鱗を微塵も見せず、安心した反動もあるかもしれない。
促されて彼と連れ立って歩き出した。
榎下智美として、葉山周平に興味は多少なりともあることも事実だ。
あの内村課長が言う期待の若手に興味が出た。
忘れると心に決めたあの夜のこと。
あの日のことは密かに胸に秘め、彼のことを知りたいと思う欲求は抑えきれなかった。