迷子のシンデレラ
「食べ物の好みは?」
「えっと、好き嫌いはありません」
「今からならこってり? サッパリ?」
彼はコンパスの長い脚を智美に合わせてゆったりと動かした。
そこはかとなく感じる彼の気品溢れるオーラ。
振り返られる彼の隣を歩くことに恐縮しつつ、彼は男版の恵麻みたいだと思った。
彼は今から行く食事の場所を決める為に智美へ意見を求めた。
「どこでもいいです」そう言って彼が連れて行ってくれるであろう高級店へ行くわけにはいかない。