迷子のシンデレラ
カウンターに案内されて一番奥へ通された。
視線を交わらせずに済む並んで座る席に安堵する。
「ビール?」
「いえ、私はウーロン茶で」
「え?
居酒屋リクエストしたのに?」
大袈裟にガックリしたジェスチャーをする葉山に笑う。
「葉山さん、意外に三枚目キャラなんですか?」
おしぼりを手にした葉山がそのおしぼりで顔を拭き初めても今なら驚かない。
実際には居酒屋に場違いな品のある所作で両手を拭いたのだけれど。
「まぁ、仕事とか、先輩と一緒だとそうかな。
女性といると二枚目を求められるからね。
崩さないようにしてるんだけどなぁ。
智美ちゃんは不思議な子だよね」
それは女として見ていないと言い切られているようなものだけど、それはそれで居心地がいい。
こちらも変に気構えなくていいのは有り難かった。