迷子のシンデレラ

 葉山は手慣れた仕草で店員を呼び「とりあえず生とウーロン茶を一つずつ」と飲み物を頼み、オススメのサラダや刺身の盛り合わせなど一通りの注文を済ませた。

「智美ちゃんは誘っても飲みに行ってくれないって内村課長が嘆いてたから、実はダメ元で誘ったんだよ」

「そうだったんですか?
 百発百中の葉山さんでもそんなこと思うんですね」

 葉山はつまんでいたお通しの枝豆を吹き出しそうになって、むせ返る。
 涙目になりつつ不満の色を露わにした。

「智美ちゃんこそひどいんじゃない?
 初対面で僕のことどんなイメージなわけ?」

 厳密には多分、初対面じゃないんですけどね。
 それに王子はみんなにどんな人か知られているんですよ。
 人気者の宿命として。

 さすがにそんなことを言うわけにはいかず「ひどいですか? そんなことないですよ」とテーブルに運ばれた飲み物と共に有耶無耶にした。

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