迷子のシンデレラ
「そういうことにしておこうか。
とりあえず乾杯しよう。
お疲れ」
「お疲れ様です」
軽くグラスとジョッキを合わせると葉山はジョッキを傾けてビールを飲み始めた。
なかなか気持ちのいい飲みっぷりだ。
ジョッキをテーブルに置いた葉山は一息つくと小さく本音をこぼした。
「まぁ、遊んでないって言ったら嘘になるけど」
しれっと、そういうことを言える葉山が憎らしかった。
一晩限りの関係だと割り切っていたつもりなのに、本人であろう人にその相手とさえ気付いてもらえず遊びでしたと公言されているも同然だ。
葉山に気付かれたくないと思っていたくせに都合のいい話だ。
そんなことを思っていると葉山の次の言葉に智美はウーロン茶をゴクリと飲み込んだ。