迷子のシンデレラ
「実は……最近、遊びに興味がなくなるくらい真剣になれそうな女性に会えたんだよ」
「え?」
最近……。
胸の高鳴りを覚えつつも、自意識過剰だと自分を戒める。
彼を見やると寂しそうな顔をさせて伏せ目がちに微笑んだ。
その微笑みがあまりに悲しそうで胸を締め付ける。
「君に……少し似てる」
ひとりごとのような呟きは締め付けた心臓に悲鳴を上げさせた。
「ごめん。しんみしちゃったな。
飲もう」
彼は再びジョッキを傾けた。
智美は震える手を気付かれないようにカウンターの下で握る。
彼はあの夜の彼だ。
彼は……忘れてはいなかった。