迷子のシンデレラ

 酒の肴の話題は共通の知り合いである内村課長。

 どれだけ愛妻家なのか、そのせいでどれだけ自分の妻が可愛らしいか懇々と話されると苦笑混じりに教えてくれた。

 愛妻家の内村課長が話すノロケ話を邪険に扱っているような態度をしつつも、なんだかんだと最後まで聞いてあげているようだ。
 内村課長への愛のある対応が微笑ましく、そして彼の優しさを垣間見た気がした。

「だから智美ちゃんを勧められるんだ」

「はい?
 どうしてそこで私が出てくるんです?
 関係ない……」

 最後まで言い切る前に隣から覗き込まれていて心臓がジャンプした。
 あと少しであのエメラルドグリーンの瞳に捕まってしまうところだった。

 こんな至近距離で目と目が合ってしまったら……。
 想像するだけで身震いをして、出来るだけ不自然にならないように視線を逸らす。

「ね。
 余計なお世話だって僕も思ってた。
 絶対にあの子はいい子だって僕が会ったこともない女性を勧めてきて」

 内村課長なら言い兼ねない。
 智美に葉山を勧めてくるくらいだ。
 葉山に智美を勧めていても驚かない。

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