迷子のシンデレラ
「買い被り過ぎですよ。
すみません。ガッカリさせて」
力なく笑うと顔を隠していた腕をつかまれて思わず顔を上げてしまった。
手をつかんだ葉山は真っ直ぐに智美を見つめていた。
「そんなことない。そんな……」
エメラルドグリーンの瞳に吸い寄せられて、目が離せない。
どうしよう。やっぱり私、彼のこと……。
不意に視線が外されて腕も離された。
「ごめん。乱暴につかんだりして。
軽率だった。
……出ようか」
彼は智美に背を向けてレジへと向かっていく。
智美は離された腕を抱えるように抱きしめた。
離されなかったら、抱きついてしまいたかった。
「あの、すみません。私も払います」
初動が遅れたせいで彼に全てを払わせてしまった。
彼は悪戯に笑う。
「ダメだよ。
払わせたら内村課長に怒られる」
「でも……」
これでは何の為に居酒屋へ行ったのか分からなくてなってしまう。
半分払います。と、言える店にしたかった。
不満顔を向けても彼はどこ吹く風。