迷子のシンデレラ

「やぁ。お疲れ様」

 遅くなった帰宅。
 思わぬ人に声をかけられて絶句した。

 葉山が会社の前でいつの日かと同じ場所に立っていた。

「やっと会えたよ」

 彼の言葉に驚いて思わず聞き返した。

「もしかしてずっと待たれていたんですか?」

 智美の質問に葉山は悪戯っぽい笑みを向けた。

「気持ち的にはずっと待っていたよ。
 毎日、会えるかなって」

「毎日!?」

 あの、葉山と飲みに行った日から三、四日が経っている。
 早く帰れる日もあれば遅い日もあったが、葉山には気付かなかった。

 そこまで考えてからかわれているのだと気がついた。

「ご冗談はやめてください。
 私みたいな人間をからかったって何も面白くないですよ」

 連絡先も交換した。
 それなのに連絡もよこさないで、毎日待っていたと言われてもおかしな話だ。

 そうやって心を弄んでからかいたいだけだ。
 そう結論付けて彼の前から去ろうと歩き出すと彼もまた、智美と一緒に歩き出す。

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