迷子のシンデレラ

 遊びで構わないと思う智美とは裏腹に葉山は至って紳士的に智美と接した。

 バーを出ると送るとまで言う。

 断っても遠慮しないでと言われ、何度かのやり取りの後に観念して送ってもらうことにした。

 帰りながら彼は呟くように言った。

「僕が手に入れられないものは無かった」

 なんて人だろう。
 傲慢で利己的で。

「まるで愛なんて信じていなかったしね」

 王子様だと信じて疑わなかった彼の黒い部分を見て、幻滅するはずが、彼の悲しそうな横顔を見て思いが鈍る。

 あの日の彼も「君も遊ぼう」と言っていた。
 そういう人だと分かっている。
 なのに、どうして惹かれてしまうのか。

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