迷子のシンデレラ
「智美ちゃんは不思議な子だ。
つい、胸の内を話してしまう」
「私でよければ。
お話を聞くくらいしか出来ませんけど」
控えめにそう言えば彼はふっと表情を緩ませた。
「それがきっと君の魅力だよ」
アパートに着くと「ここですから」と彼へ告げた。
ボロアパートの前で言うのは勇気が必要だったが、今さら彼へ取り繕ったところでどうにもならない。
彼はボロアパートは気に留めない様子でスーツの内ポケットから小さな袋を取り出した。
「これ……」
「君に会うまでに可愛いものが目に入るとつい買いたくなって困るよ。
だからもらってくれると嬉しい」
袋の中には可愛らしいイヤリングに綺麗な口紅。
「前にも戴きましたし……」
彼へ返そうとしても受け取ってはもらえない。
「突き返されても僕では似合わないだろう?」
智美の手の中から一つを取って彼は自分の耳に持って行き、戯けてみせた。
いくら綺麗な顔立ちでも男性の彼にはさすがに似合わない。
見上げた先の彼の行動に目を丸くして笑みをこぼした。
「忘れてました。葉山さんの三枚目キャラ」
「あぁ。うん。僕も」