迷子のシンデレラ
「今日のシュシュも僕がプレゼントしたのでしょう?
つけてくれてて嬉しかった。
今日のも使ってよ」
「……はい」
「じゃ、おやすみ。
ちゃんと早く寝るんだよ」
「え、えぇ」
背中を軽く押され、送り出された智美は拍子抜けして惚けた顔でアパートの階段を上る。
ドアを開けるところまで彼が見つめていて振り返って手を振った。
玄関に入るとその場でしゃがみこむ。
自ら抱きついてしまいたかった衝動が今さら体全身を駆け巡って膝を抱えた。
そんな衝動はあの日に夢とともに置いてきたはずなのに。
あの夜とは違う紳士的な彼とどうなりたいのか、自分でも分からなくてため息を吐いた。