白百合
「ただいま……」
返事を期待することなく小さな声で呟く。
両親とも忙しいのだろう。
私の母は、有名女優だ。家よりもテレビの中で見かけることの方が多い。
そして父は警視総監という、どちらも多忙な家庭。
物心ついた時から、愛情を貰った記憶はない。
そんな家庭のせいか、たった一人の姉すらもひねくれてしまい、あまり帰ってこない。
でも姉が帰ってこないから寂しい、など思わない。
むしろ帰ってこなくてもいい。あんなやつ。、