愛しい君を殺したのは誰？

『隼人君、あのね…こんなん言うてええんか、迷うんやけど、あの時、奏ちゃんのお父さんがいなくなったのは、奏ちゃんのお母さんが…殺したんちゃうかって、噂が立っててん…』

『え？おばさんが？』

『隼人君の耳には入ってなかったんやね。良かったわ。ただ、大人の間では、そんな噂になってて』

『でも、どうしておばさんが？あんな優しい人だったのに…おじさんだって、すごく優しかったのに』

僕は、おじさんとおばさんにも良くしてもらってたのを思い出していた。

『…今の隼人君なら、わかると思うけど…奏ちゃんのお父さん、若い女と浮気してたみたいやって』

信じられなかった。

『浮気が奥さんにバレて、殺されて、どっかに埋められたん違うか？って噂がね。奏ちゃんのお父さんは小柄な人やったから、それが出来たんちゃうかって。でも、そんなんただの噂やって言うて、奏ちゃんのお母さんは町を出ていくこともなかったんよ。ただ…』

『ただ…？』

僕は、興味深く聞き返した。

『お母さん、精神的に不安定になってしまってね…普通に生活出来てはいたんやけど、時々おかしくなったりしてね…そんなお母さんと毎日間近に一緒にいて、奏ちゃん、たぶん辛かった思うわ』

知らなかった。

だんだん奏の家に行かなくなってたし、気づかれないようにしてたのかも知れない…