愛しい君を殺したのは誰?
奏は、最初はとても落ち込んでいた。

父親が居なくなったから…

って、周りはみんな思っていた。

だけど、僕は知っていたんだ…

奏の本当の悲しみを。

あれから、時々、僕は奏の家を見張っていた。

お母さんが奏に暴力をふるっていたら、そのタイミングで奏に電話をかけたりした。

苦肉の策だけど、そんなことしか出来なかったんだ。

ただ、その見張りのおかげで、僕はその光景を見ることが出来た。

恐ろしい、その光景を。

奏が…

自分の父親を…

ナイフで刺した瞬間を。

そこには、母親もいた。

僕は、声をあげそうになったが、慌てて口を押さえた。

奏の目はうつろで、ただナイフを持ってその場にずっと立ったまま動かなかった。

奏のお母さんは、驚くそぶりもなく、奏の手からナイフを引き抜いた。

おばさんが、奏に何か言った。

それから、2人は、父親の死を隠すための作業を始めた。

僕の考えだけど…たぶん殺せと命令したのは…

おばさんだ。

奏はきっと、言われるままに刺した…

大切な母親のために。

父親は、そんな2人に、直接、浮気の制裁を受け、車に乗せられて、どこかに埋められたんだろう…

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