愛しい君を殺したのは誰?
奏は…お母さんと自分を、裏切って悲しませた父親への激しい憎しみと、母親を哀れに思う感情を、ただ必死に隠していたんだと…

僕は思う。

『みんな裏切る…』

奏のその言葉に、どれほどの悲しみや憎しみが含まれていたか、想像が出来た。

奏は、どんな事をされていたとしても、お母さんが大好きだったんだ。

虐待も、お父さんに裏切られてしまった母親のどうしようもない怒りが、奏に向いてしまったんだと、奏自身が痛いほど理解していたんだろう。

そんな大きな闇を、たった1人で抱えていたんだとおもうと、やりきれない思いで、僕は毎日毎日奏の傍にいた。

そしたら、そのうち、僕も…

殺人なんか無かったって、そう思えるようになったんだ…
< 51 / 58 >

この作品をシェア

pagetop