胎動
☆☆☆

次に目が覚めたのはソレの泣き声が聞こえて来たからだった。


ソレの泣き声は鳥に近かった。


朝のさえずりではなくギャーッギャーッという喚き声。


壮絶な声に驚いて飛び起きたあたしは、鞄の中で泣きじゃくっているソレを抱き上げた。


「ごめんね、お母さん寝てて」


抱き上げて自然と出て来た言葉がそれだったので、自分自身驚いた。


ソレの母親が自分であると自覚している証拠だ。


ソレの泣き声はすさまじかったが、これもあたし意外の人には聞こえていないようだった。


鞄の中にソレを戻し、保健室から一番近いトイレへと駆け込んだ。


「お腹減ったよね?」


そう言い、汚物の蓋を開ける。


すると血の匂いを嗅ぎつけたのか、ソレが勢いよく鞄の中から飛び出した。
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