胎動
料理をしながら、あたしは横目で叔母を見ていた。


赤く染まるタオル。


あれがあれば、あの子のご飯にできる。


洗濯機に入れられる前にどうにか回収できないだろうか……。


そう思いながら炒め物をしていると、叔父がもう1枚タオルを持って来た。


まだ出血が治まらないようで、叔母は青い顔をしている。


「あの、病院へ行ってきてください。料理はしておきますから」


そう声をかけると、叔母は小刻みに頷いた。


ニンジンを切っていただけでそれほど深く指を切るなんて、どれだけドン臭いんだろう。


そう思い、内心苦笑いを浮かべる。


2人が慌ただしく家を出た後、あたしは料理を完成させた。


ソファに投げ出されたタオルを手に取り、鼻歌まじりに自室へと向かう。
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