胎動
あたしは一度家に戻り、私服に着替えてから再度探しに行くことにした。


昼間は家に誰もいないから、怒鳴られる心配もない。


そう思い、玄関に入った瞬間だった。


なにか生臭い匂いが鼻孔を刺激して顔をしかめた。


なんだろう?


何度か嗅いだことがある臭いな気がするけれど……。


刺激臭の元をたどるように歩き出すと、その先にあったのは2人の寝室だった。


キッチン横のドアを開けて中を確認する。


寝室のベッドの上に何かが転がっているのが見えた。


それは見慣れた指輪をはめていて、叔母の左手であることがわかった。


「え……?」


唖然としていると、どこからかペチャペチャと、なにかを舐めるような音が聞こえて来た。
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