胎動
悩んでいたとき、祖父母がリビングに入って来た。


2人とも突然のことで混乱し、疲れた顔をしている。


「大丈夫? ごめんね急に呼び出して」


慌てて謝ると、祖母があたしの手をにぎりしめてきた。


シワシワだけど、柔らかくて優しい手。


「いいんだよ。それより1人で心細かっただろう。迎えに来てやれなくてごめんね」


そう言って祖母はあたしの手をさすった。


「ううん大丈夫。あたし、家事全般できるようになっちゃったもんね」


おどけてそう言うと、祖父が顔をシワシワにして笑ってくれた。


「今日はここに泊まるけど、明日は仕事がある。友里、どうする?」


祖父にそう聞かれて、あたしは「大丈夫。友達がいるから」と、返事をした。


きっと、自分たちの家に来なさいと言っているのだろう。

< 151 / 231 >

この作品をシェア

pagetop