胎動
透はあたしの手を離さない。


声もすごく真剣だ。


あたしはゆっくりと、視線を透へと移動させた。


透の頬は真っ赤に染まっているけれど、あたしのことをちゃんと見てくれていた。


「友里……俺たち、付き合おうか」


その言葉に時間が停止した。


『俺たち、付き合おうか』


透の言葉が何度もリピートされる。


「付き……合う?」


「うん。俺は友里のことが好きだ」


好きだと言われた瞬間、涙がこぼれていた。


「あれ、なんで涙が」


慌てて涙をぬぐうと、テーブルの向こうから膝立ちになった透が、あたしの体を抱きしめて来た。
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