胎動
もう黙っておくことはできなかった。


あたしは透の部屋に入り、テーブルを挟んで向かい合って座っていた。


いつもはテーブルの上に課題が広がっているけれど、今日はなにも置かれていない。


それだけで、少し気分が落ち着かなくなった。


「自分から行ったわけじゃないの……」


あたしは小さな声で説明をし始めた。


夕夏から写真を見せられたあの日、あたしは気が付けば山の麓に立っていた。


自分の意思であそこまで行ったわけじゃない。


信じてもらえるかどうかわからないけれど、今は真実を語るしかなかった。


「やっぱり、あの時か……」


透は下唇を噛みしめてつぶやいた。


「隠しててごめん」


「いや、友里と同じことになったら、俺だって隠してたと思う」


透はそう言い、あたしは話しの続きをした。
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