胎動
恐らく、あの時にソレがお腹に宿ったこと。


それはあっという間に成長し、叔父に暴行された衝撃で生まれて来たこと。


ソレは血を吸って成長し、大人になってからは自分で狩りをしていたこと。


「あたしの叔父と叔母は、ソレが食べたの」


あたしの言葉に透は青ざめたが、頷いてくれた。


恐らく、薄々気が付いていたのだろう。


「それからソレの姿はあたしにも見えなくなった。今どこにいるのかもわからない」


そう言って口を閉じた。


黙っていたことはすべて話した。


心のつっかえが取れたけれど、透から嫌われたんじゃないかという不安は残った。


すると透が立ち上がり、あたしの横へ移動してきた。


なにを言われるのだろう。


別れを切り出されるのかもしれない。
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