胎動
あたしはそう言い、ポケットからスマホを取り出した。


去年、初めてのアルバイトで手に入れたスマホ。


それまでは欲しいものがあっても我慢してきた。


高校生になってあたしはようやく自由に使えるお小遣いを手にしたのだ。


このスマホは思入れ深いものだった。


そのスマホを使って悪魔山を検索してみる。


この地域限定の呼び名だと思っていたけれど、すぐに何件かヒットした。


その中には見覚えのある山も入っている。


「すごいね『悪魔山』でちゃんと出て来るんだ」


横から画面をのぞき込み、梓がそう言って来た。


「本当の名称ってなんなんだろうね?」


悪魔山の存在はずっと昔から知っていたし、慣れ親しんだ山だった。
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