胎動
照平は目を伏せ、その照平が立ち止まり、驚いた表情を浮かべてあたしを見つめる。


「幼稚園のころ、2人とも死んだ」


「……へぇ」


場に立ち止まった。


似たような境遇だったためか、話くらい聞いてくれるみたいだ。


「辛いことを思い出させるかもしれないけど、どうしても聞きたいの」


「いいよ。昔のことだしさ」


照平が少し無理してそう言っているのが理解できて、胸がチクリと痛んだ。


ごめんね照平。


「照平のお父さんはまだ行方不明なんだよね?」


そう聞くと、照平は頷いた。


「母親が死んだ一週間後くらいに、父親も失踪したんだ」


「お母さんはどうして……」


そこまで言って口を閉じた。
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