胎動
「子供の頃の記憶だから定かじゃないけど、毎日喧嘩してた気がする。原因がなんだったのかわからないけど」


「……そうなんだ……」


あたしはそう呟いて思考回路を巡らせた。


例えば、照平の父親が悪魔山へ行き、ソレに妻を殺して欲しいと願いを託していたとしたら?


『あいつが憎い。あいつを殺してくれ! 俺に罪が被らないよう、事故死させてくれ!!』


見たことのない照平の父親が、祠へ向けてそう願掛けしている姿が浮かんできた。


あたしは強く身震いをしてその想像をかき消した。


「俺の父親が行方不明になってから、この街の人たちが何人か姿を消した」


照平の言葉にあたしは頷いた。


昨日見たあのニュースのことだろう。


「父親と他の行方不明者に関係があるんじゃないかって、随分騒がれたよ」


照平はそう言って苦笑いを浮かべた。
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