胎動
勢いをつけて振り返る。


しかしそこにはなにもない。


「いい加減にしなさいよ。お母さんだって怒るんだから」


そう言いながらも声は震えていた。


すぐ隣の部屋で眠っている透のことを思い出す。


起こしに行こうか……。


そう思った瞬間、突然部屋の電気がついたのだ。


「きゃあ!!」


思わず悲鳴を上げてきつく目を閉じた。


「どうした友里? さっきから1人でぶつぶつ言ってただろ?」


その声に目を開けると、ドアの前に透が立っていた。


電気をつけたのは透だったのだ。
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