胎動
☆☆☆

元々悪魔なんていなかった。


得体の知れない菌やウイルスに名前を付け、怖がった結果、産れたんだ。


「それなら、怖がらなければ消えるかもな」


学校までの道のり、透にそう言われてあたしは「え?」と、聞き返していた。


「恐怖心が作り上げた悪魔なら、俺たちだけでも平気な顔してようぜ」


透はそう言って笑った。


「そんなに単純なものなのかな……」


「ネット上でも拡散しよう。悪魔山の本当の由来をあちこちに書き込んで、悪魔なんていないって知ってもらうんだ」


膨大な量の恐怖を払拭すれば、すべて元通りになるんだろうか?


透の言っていることはわかるけれど、自信はなかった。


「そんな暗い顔すんなって。絶対に大丈夫だから」
< 200 / 231 >

この作品をシェア

pagetop